第6章 応報
時は戻って現在。
一向は暑い中、川の氾濫を止めるべく山を歩いていた。
「ね~、亜弥ちゃん!何でそんな後ろ歩いてるの?こっちおいでよ。」
知盛の後ろを歩く亜弥に、先を行く望美が振り返る。
「――あ、うん。」
言い辛そうに視線を泳がせる亜弥に変わって、硬牙が答える。
「神子様。我々は知盛様にお仕えする身。主より先を歩くことは出来ませぬ。」
「あ――、そうなんだ。」
思わず知盛の顔を見るが、彼は視線をどこか他所へやったままだった。
しばらく歩けば、湧き水が見える。
「取り合えず一旦休憩しようぜ?女の足じゃ辛いだろ?」
一番先頭を歩いていた将臣が言う。
「ク――。兄上の提案なら従わねばならぬ、な。」
「行きたきゃお前一人で行っても良いぞ。」
相変わらずの皮肉振りに、将臣は苦笑を漏らす。
「――おい、少し付き合え。」
「え?」
将臣の言葉を無視して、知盛は望美に声を掛ける。
知盛はそれ以上答えず、林の中へと進んで行った。
望美は困った様に亜弥を見るも、苦笑を漏らしている彼女を見れば知盛の後を追った。
「亜弥。良いのか?」
心配そうに将臣が亜弥に問い掛ける。
「え?あぁ、良いのよ。知盛様のことだから何かお考えがあってのことでしょう。」
「信用してんだな。」
将臣の言葉に、亜弥はニッコリと笑うだけだった。
第36夜~常夏の歌聲~
その頃。
知盛は程よい場所まで来ると、木陰に腰を下ろした。
やがて、望美が後ろを追って来た。
「知盛!いきなり何?亜弥ちゃんは良いの?」
「アレは余計な詮索はせん。賢い女だからな。」
絶対的な信頼関係を築いている二人に望美の心が軽く痛む。
「それで?どうしたの?」
知盛の横に望美は腰を下ろすと、彼に問い掛ける。
知盛はゆっくりとその瞳を開いた。