第5章 記憶
「北の方様!お下がり下さい!源氏の神子ですぞ!」
「――?!望美が源氏の神子?!」
衛兵は亜弥を追いかけながら、望美に向けて矢を構える。
「何?!何がどうなってるの?!」
状況を把握出来ない望美は、動けずにいた。
「神子!早く時空を越えて!」
ただ一人、現状を理解した白龍が衛兵に飛び掛る。
「白龍!亜弥ちゃん!」
「止めなさい!相手は子供なのよ?!」
飛び掛って来た白龍を斬り付けようとする衛兵に亜弥は怒鳴り付ける。
「しかし!北の方様!源氏の手の者は全て排除せよと知盛様から命を受けております!」
「でも!」
納得の行かない亜弥を尻目に、衛兵は白龍を退け望美に矢を構える。
「止めて~!!」
そこからは全てがスローモーションだった。
弓を構え弦を引く衛兵。
時空を飛ぶ為、逆鱗を使う望美。
放たれた矢から望美を庇おうと飛び出す亜弥。
一瞬の空白が出来る。
「――きゃあああ!」
「亜弥ちゃん!――待ってて!助けるから!」
衛兵の放った矢が亜弥の背中を貫く。
その瞬間、亜弥は望美を庇うように抱き付いた。
望美は消える瞬間に、抱き付かれたせいでバランスを崩す。
その為、逆鱗を亜弥の手に残してその場を消えた。
その場に残ったのは、貫かれ血の気を失った亜弥だった。
「北の方様!早く知盛様のところへ!!」
衛兵達は慌てて亜弥を抱きかかえると、屋敷を後にする。
横たわった白龍は望美が消えた場所を見ながら、静かに呟く。
「頼んだよ、神子。全ての運命は貴女の手に――。」
第33夜~戦慄する背後~
その頃。
知盛の優位に事は進んでいた。
「フン。つまらぬな。この程度か。」
「――はぁはぁ。化け物か、コイツは。」
息一つ乱していない知盛に、八葉たちは敗戦を覚悟する。
その時、知盛の元に伝令が運ばれて来る。