第4章 虚構
翌日。
望美は知盛達の宿を訪れていた。
けれど入る勇気が起きずに、入り口をウロウロとしていた。
「――どうしようかな。」
「あら?望美?!お早う!どうしたの?」
「あ――、亜弥ちゃん!お早う。」
迷っている望美に声を掛けて来たのは、他でも無い亜弥だった。
「あの――、ね。将臣くんと知盛、いるかな?」
怖ず怖ずと問い掛ければ、亜弥は満面の笑みで答える。
「いるわよ。上がって?瑠璃、お二人を呼んで来てくれる?」
「かしこまりました!」
亜弥の命令に、後ろに控えていた瑠璃がすぐさま動く。
その間に、亜弥は望美を広間へと案内した。
やがて瑠璃に連れられて、知盛と将臣が姿を現す。
第29夜~融解していく霙~
「お?はよ。望美。朝からどうした?」
「お早う。うん――。あのね、実は二人に手伝って欲しいことがあるの。」
瑠璃が人数分のお茶を用意する中、望美が言い辛そうに口を開く。
「何だよ、改まって?」
「――川の氾濫、か?」
気だるそうに寝そべっていた知盛が口を開く。
「――?!何で知ってるの?」
知盛の言葉に、望美は目を見開く。
「どういうことだ?」
話が読めない将臣は、二人を交互に見た後亜弥を見る。
同じく理解出来ていない亜弥は首を傾げた。
「川が氾濫して源氏も足止めを食っているのだろう?おおかた、神子殿は犯人の見当がついているから我々に力を借りに来たのではないのか?」
全員の視線を浴びる中、知盛がつらつらと言葉を述べる。
「――知盛の言う通りだよ。――手伝ってくれないかな?」
何故知盛がそれを知っているのかと不審に思いながらも、望美は将臣に問う。
「そりゃ俺らも足止め食ってるから手伝う、けどよ。」
「――決まりだな。」
そう言えば知盛は珍しく、重い腰を一番に上げた。
そんな知盛の様子に、亜弥は疑問を抱く。
一番に部屋を後にした知盛の後ろを、亜弥は急いで追い掛けた。
そんな二人の様子を望美は何とも言えない気持ちで見ていた。