第3章 因果
亜弥がこの世界に来てから、6年後。
一つの事件が起こる。
この時、亜弥・22歳。
将臣・19歳だった。
第14夜~薄紅よ咲き誇れ散り急げ~
望美が目を覚ますと、女の子が怨霊に襲われていた。
「危ない!――このっ!」
近くにあった剣を握ると、望美は無我夢中でそれを振り上げた。
「きしゃああああ!」
怨霊は望美の剣を受け、一瞬の内に消滅した。
「――大丈夫?」
「有難う――。貴方は、白竜の神子――?」
助けた少女は、静かに問うた。
「――え?」
望美が目を点にすると、横から子供が現われる。
「そうだよ。貴方は、私の神子だから――。」
「あの時の子?」
望美が言うと、白竜は笑顔で頷いた。
「やっぱり、貴方が白竜の神子ね。私は梶原朔と言うの。よろしくね、望美。」
朔が微笑むと、望美もそれに倣った。
こうして一つの物語が、動き始めたのである。
望美は白竜の逆鱗を使い、何度も時を遡り歴史を正した。
けれど一度も皆が幸せになる歴史は、訪れなかったのである。
「――どうしてぇ?」
望美は、自分の無力さに嘆いた。
けれど彼女は、一度も諦めなかったのである。
繰り返す歴史の中で、望美は一人の男性に恋をした。
それが、『平知盛』である。
今までの歴史の中で、知盛には妻が居なかった。
彼は戦だけに、生きる意味を求めた。
それ故に、いつの歴史の中でも戦に負け海に身を投げたのである。
いつしか望美は、彼を助けたいと願う様になっていた。
けれど彼は絶対に、望美の願う様に生きてはくれなかった。
「――じゃあ、な。神子殿。」
それが、彼の最後の言葉。
望美は涙を流しながらも、決意をした。
次こそは必ず、彼を助けてやるのだと。