第2章 巡会
亜弥がしばらくして部屋に戻ると、知盛は一人で月見酒と洒落込んでいた。
「――と、ももり様?」
まさか起きているとは思わず、亜弥は驚く。
「楽しかったか?アイツとの逢瀬は。」
その言葉に、亜弥は全てを理解する。
「見ていらっしゃったのですね。意地悪なお方。お声を掛けて下されば良かったのに。」
少し拗ねる亜弥の肩を抱き、知盛は自分の方へと抱き寄せる。
「――知、盛さま?」
普段の彼の行動からは予測出来ない出来事に、亜弥は目を丸くする。
「ふん。面白く無いものだな。」
「え?」
知盛は腰まである亜弥の黒髪を、愛おしそうに梳きながら言う。
「面白く無いと言ったんだ。お前があの男と、仲良く話しているのは好かん。」
「――それって?」
ヤキモチかと問おうとする亜弥の唇を、知盛は自分のそれで塞ぐ。
「――ふ、ぅ――。知盛さま――!」
「お前は俺のモノだろう?亜弥――。」
甘く甘美な毒の様な声で、知盛が亜弥の身体を侵食して行く。
「――ぁ、ん。そうです…。私は知盛様だけのモノ――。」
「イイ子だ。」
知盛の指に、亜弥の身体は従順に反応する。
その様子を知盛は、口角を上げて見ていた。
「――知盛さま。愛しています。」
「あぁ――。俺も、愛している――。」
その言葉に、亜弥の身体は満たされて行く。
亜弥はその夜、知盛に一晩中抱かれていた。
それから間もなく、亜弥は2人目の子を身篭った。
翌年生まれた二児は、女の子で『亜依』と名付けられた。
将臣は複雑な気持ちで、その出産を見守った。
けれど子供を抱いた亜弥の顔は、とても嬉しそうだった。
それを見つめる知盛の目も、普段とは違い穏やかだった。
二児の母親となった亜弥は、平家で誰からも愛されていた。
第13夜~君と振り返れば梦々しい過去~
それから2年後。
一つの事件が、全てを変えた。
平清盛が亡くなったのだ。
けれど彼は、翌年『怨霊』として蘇った。