第6章 「どんな言葉でも言い尽くせない」
「ねえ、裕太。今日終わったら飯行かない?」
「え?太輔さんは?」
「今日は・・・・・・」
宏光のぶすっとした顔を見て察した。
「今日は客かぁ?いいよ、行こうか」
太輔が客とアフターの時は裕太と遊ぶことが多くなった。
仕事を終えて、行きつけの居酒屋に向かった。
「でね、太輔がこの前アフターから帰ってきてからさぁ・・・あ、ごめん俺ばっか話してる?」
「ううん、宏光くんってさ、ホントに太輔さんのこと好きなんだね」
「うん」
「でもさ、何でそんなに好きになったの?いや、別に同性だからって偏見とかじゃなくてさ、そうじゃなくて、なんか辛いこと多いみたいだからさぁ、今日だって客と一緒なんでしょ?」
「運命だと思う」
「運命?」
「あー、笑うなよ?運命なんて言ってんの馬鹿みたいだけどさ。でもそうとしか思えないんだよね。元々俺ノーマルだし、男なんて気持ちわりーって思ってたんだけど。太輔とあって男とか女とかどうでもよくなった。俺は運命の人に会っちゃったんだ。理屈じゃなくて、抗えないって言うか」
「ふーん、俺にはよくわかんないけど。凄いよね、そこまで人を好きになれるなんて」
「あれ?裕太は彼女とかいないの?そんな話ししないけど」
「いたよ、でも今はいない。俺も運命の人に会いたいなー」
「そうなんだ?裕太も太輔ほどじゃないけどかっこいいのに、モテるでしょ?店でも結構人気出てきてるし」
「あはは・・・太輔さんより劣るけどね」
裕太は宏光の一途な姿に心が和んだ
自分にもこんなに純粋に人を好きになれる心があればいいのに。