第5章 「まだ届かない・・・」
~店の更衣室~
「ねぇ、宏光くん。太輔さんって宏光くんに凄い優しいよね?なんか、他の人たちには冷たいのに」
「ん?そう?そんなことないんじゃない?」
そう言いながらも顔はにやけてしまう
「太輔さんってどんな人なの?なんか怖そうなんだけど」
「んー、怖そうに見えるかもしれないけど、あいつは優しいよ?そんで、かっこよくて、頭がよくてクールで・・・・・・」
「誰がクールだって?」
後ろから声を掛けられてビックリして振り返った
「太輔っ!ビックリしたぁ」
思わず胸を押さえながら前のめりになる
「裕太・・・だっけ?こいつ(宏光)は俺のこと好きだから、こいつの言うことなんてあてになんねーよ?」
「え?」
店では当然二人の関係は秘密にしていて、太輔が口に出してそんな事言うのは初めてだったので宏光はビックリして、口をぽかんと開けてしまった。
太輔はその顔を見て笑いながら続けた
「信じらんないって顔してんな?ホストが男と付き合ってたらダメ?」
「え、いや、嘘でしょ?」
証明するように、目の前に座っていた宏光の顎を持ち上げキスをして見せた
目にしている光景が理解できなくて声もでないでいる
宏光も突然の行動に動揺してそのまま固まってしまった。
「あれ、みつ、いつもみたいに抱きついてこないの?なんだよ?お前まで固まんなよ」
ペシっと宏光のおでこを叩いて
呆然としている二人を残して太輔は更衣室を出ようと背を向けた
「裕太、だから宏光には手ださないでねー」
そう言いながら扉を閉めて出て行ってしまった。
太輔が店の子に自分と付き合ってるから手をだすなと忠告した?
動揺はしたが、宏光は自分が認められたようで有頂天になった。
このことが切っ掛けで、太輔との事も隠さずに話しが出来るようになった裕太といっそう仲良くなっていった。