第4章 「猜疑心」
給料日はホスト達もあまり客を呼ばない。
だから店も比較的空いている。
俺はみつと店がはねてすぐに飯を食べに行って、いつもより早く家に帰ってきて、キングサイズのベッドに二人でもぐりこんだ。
「はぁ、たい・・・すけ・・・もっと」
「なぁ、みつ?」
「なに」
荒い息の隙間で返事をした
「お前、あの新人と仲いいじゃん?」
「だって、太輔が・・・面倒見ろって・・・」
「ん?俺の言うことなら何でもきくの?」
「たいすけの・・・言うことなら・・・なんでも」
その言葉を聞いて太輔の動きが止まった
「どうしたの・・・」
「じゃあ、死ねる?」
「え?」
その突然の冷たい言葉に目を見開いた
「な、なに?・・・嘘だろ?」
「お前、今何でも言う事きくって言ったじゃん、なに?死ねないの?」
「マジでいってんの?・・・なんで?なんでそんな事。俺なんかした?」
ショックを隠しきれない顔で宏光はすがるように聞いたが、吐き捨てるように言われた
「もういいよ、お前もその辺の女と一緒なんだな。好きだとか愛してるとか口先ばっかで」
宏光から体を離し、ベッドサイドに置いてあるタバコに手を伸ばし俯きながら部屋を出て行く宏光の後姿を眺めていた。
暫くしたらキッチンの方からうめき声が聞こえてきて
「まさか」
慌てて行ったら裸のまま手首から血を流してうずくまってる宏光を見つけた
「ばかっ!!お前なにやってんだよっ」
「だって、お前が・・・死ねって・・・」
「ふっざけんなよ、冗談にきまってんだろっ」
近くにあったタオルで手首を縛って肩を抱きかかえた
「嘘だっ、冗談なんかじゃなかっただろ?お前・・・本気だった」
「ばっか、スゲー血出てんじゃんかよ。いいから腕上げとけ救急車呼ぶから」
そんな言葉なんて聞こえていないようで
「俺はその辺の女とは違う!!本気でお前の事・・・死んだら信じてくれるんだろ?なぁ、太輔」
俺の胸の中で顔を涙でぐしゃぐしゃにして嗚咽しながら何度も訴えかけられて
「太輔の言うことならなんでもきくよ・・・なんでも・・・」
「わかったから、病院行くぞ」
しがみついて離れない宏光に何とか服を着せて、近くの救急病院に掛け込んだ
酒が入っていたから出血は酷かったけど、傷はさほど深くなかった。