第1章 貴方って人は。
――そして。
ちゅっ
と、赤葦に触れるだけの可愛らしいキスをした。
「!!!???!!?」
驚きを隠せない赤葦をギュッと抱きしめ、木兎は女子生徒に「もう邪魔すんなよ?」と優しく言った。
「ごめんなさいぃ~」と、何故か顔を赤くして去っていった女子生徒を見送り、赤葦はようやく正気に戻る。
「な、何してんすかアンタ…!」
「何って、キス?」
ごくごく普通の顔をして答える木兎に、赤葦はさらに戸惑う。
「キスって…何も目の前でしなくても!」
おどおどする赤葦をよそに、木兎は何故か平気そうにいつも通りニコニコと単細胞な笑顔を浮かべながら、「だーって赤葦があんな変な嘘吐くからじゃーん?」と人差し指を向けながら赤葦に言った。
…それを言われると。
何も言い返せなくなるわけなんだが。
「すみません、つい言葉が過ぎました」
「なんだかんだで信じてくれたけどな!」
木兎に視線を向けると、彼は部活中に見せるにんまりとした笑顔でこちらを見ていた。
それを見て、赤葦はなんとなく安心した。
……いつもの木兎さんだ、と。