第1章 貴方って人は。
「え」
「ん……えっ!?」
「…え」と赤葦自身も反射的に声に出てしまう。考えてみると、これは唐突すぎる話だ。
何せ、男同士だし。
信じてはくれないだろう、木兎さんも動揺してるみたいだし。
そうは思ったが、言ってしまえばもう取り消すことは難しくなる。自分で言った事なのだが、少々面倒臭い事をしたな…と赤葦は後悔した。
だが。
「そ、そうなんだ!俺達付き合ってんだ」
赤葦の吐いた咄嗟の嘘に乗っかるように、木兎は戸惑いつつもそう答えた。
顔に流れるほどの汗をかく木兎を、赤葦は横目で見る。ほんとに、嘘が下手な人だと。そう思った。
「彼女はいらないって言ってたけど……そう、なんですか?でも、男同士で…」
「そういう人もいるんだよ!お前は分かんなくていい!」
分かられると困る、と木兎の目に書いてあるのを確認すると、赤葦は改めて自分の発言をひどく後悔する。
嘘を吐くにしても、もっとマシな嘘があっただろう…。
――なのになんで俺は……
あんなことを。
そう思っていると、木兎は「というわけで!」と付け加えるように言って、赤葦の首に手を回す。