第1章 貴方って人は。
* * *
「お前…」
木兎は彼女の声に反応し、その方に身体を向けた。すると、その声の主はまた顔を真っ赤にしてあの言葉を口にする。
「やっぱり、諦められなくてっ…どうしても、木兎先輩に振り向いて欲しいんです、私っ…」
それを聞いた木兎はまた、眉を下げて笑った。そして「諦めつかねーかぁ、そうかそうかぁ」と、気の抜けた笑いを零している。
そんな顔をさせる女子生徒にひどく嫉妬のような感情がこみ上げてくるのを必死に隠し、赤葦は視線を地面に向けた。
どうしてそこまで言えるんだ。
赤葦はそう、憤りさえ覚えながら。
「あの、私を彼女にしてもらえませんか?!」
…随分と押しの強い女子だ。
赤葦はそう皮肉にも取れる言葉を心の中で呟くと、木兎の隣へと歩み寄る。
…俺の、今までの不調の元凶。
そして、彼も意図していなかった言葉を口に出した。
「俺と木兎さん、付き合ってるんだよね」