第1章 貴方って人は。
……は?
と、一瞬思考が止まる。
赤葦は考えていなかった。
まさか、あのバレーにしか興味のなさそうな単細胞のうちの主将が、女子生徒に告白されているのだから。
真っ赤に染めた頬をしているその女子生徒とは打って変わって、木兎はいつも尻上がりの眉を下げて、ははっと気の抜けた笑いを零す。
「……わりぃけど、今は俺彼女とかいらねんだ。バレー部も大事な時期だし…お前とは付き合えない。ごめんな」
妙にリアルなその言葉に、赤葦は動揺を隠せないでいた。
…木兎さんのあんな顔、初めて見た。
遠くからだが、赤葦にははっきりとわかる。
あんな悲しそうな木兎さんを、俺は見たことがない。