第1章 貴方って人は。
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数日前。昼休み。
赤葦は、偶然にも顧問と廊下で出くわし、「主将に渡しとけ」と頼まれた書類があった。
学校説明会――いわゆる“オープンスクール”という中学生向けの行事で部活紹介をやる為、バレー部のPR文を考えて提出しろ、という内容だった。
教室、学食、屋上、部室。
どこを探しても木兎はおらず、「部活の時に渡せばいいか」と溜息を吐いた時―――。
授業で使われている体育館へと伸びる、通路の端。
そこに、見慣れすぎたグレーの逆だった髪。
あれは確実に木兎さんだ。
姿を見た瞬間、声をかけようと咄嗟に発した言葉は、その向こう側にいる女子生徒にかき消された。
「私、木兎先輩が好きです!」