第1章 貴方って人は。
「えっと…ウォームアップに、ランニングとスパイク練だろ…あとー」
木兎は右手の人差し指から順番に折り曲げながら、今日の練習メニューを振り返りながら部誌と向き合っている。赤葦はといえば、もうとっくに制服に着替えて登下校の電車の中で読んでいる小説を手に取り読み始めていた。
「赤葦その次何だっけ!!」
「……フライング練習、サーブ練習、練習試合で終わりです」
本に視線を落としながらそう答えると、木兎は「さんきゅー!」と大きな声で礼を言い、シャシャシャっとペンを走らせて部誌を閉じた。
「さー!帰るぞ赤葦ー!」
「……はいはい、終わったんですね」
ぱたんと本を閉じ、光の速さで着替えを済ませた木兎と、赤葦は顧問の所へ部誌を届けて、2人当たり前のように肩を並べて学校を出る。
すると、赤葦の目に、校門前で待っている女子生徒の姿が飛び込んできた。
間違いない。あれは――……
「あの、」
「……ん?!何」
その女子生徒が校門を通り過ぎようとする木兎に声をかけた瞬間、赤葦の心臓はどきん、と大きく波打った。
彼は、その女子生徒に見覚えがある。