第5章 せんこう、がんこう【後編】
「あか、あし……っ」
『全部見せろ』
耳元で苦しそうにそう言う木兎を、赤葦が拒否する事は出来なかった。
木兎さん。
木兎さん。
木兎さん……っ!
心の中で、そう繰り返す。
そして、赤葦の中で、数日前の木兎の言葉が頭をよぎった。
……あれは、そういう意味だったのか。
木兎さんなりに、気を遣っていてくれたんだ。
「汗、かいたばっかりで臭いきついですよ…」
「いーの。俺赤葦のにおい好き」
そう言って、木兎は赤葦の首筋に舌を這わせる。今までにない感覚に、思わずびくりと身体を揺らした赤葦に、木兎はまた笑ってしまった。
「拒否らねーのな」
「え?」
「俺、突き飛ばされんの覚悟してたのに。赤葦、むしろ来いって感じだから」
――戸惑う。どころか、凄く嬉しい。
木兎の言葉に、赤葦はふっと笑いをこぼす。
「木兎さんにこんなふうに触ってもらうの、別に…嫌じゃないので……」
「拒否する理由もないです」と、赤葦は微笑む。
「はは、サンキュな。じゃあ―――」
『続けるぞ』