第5章 せんこう、がんこう【後編】
「!?」
ぐいっと赤葦の腕を引き、彼の唇に自身のそれを重ねる。赤葦は何が起こったのか分からず、目を見開いていた。
赤葦。
……赤葦。
赤葦………
木兎は心の中で赤葦の名前を呼ぶ。その名前を呼ぶ度に、彼の唇を塞いだ。
「ん、んん…っ!ふ」
木兎の舌が容赦なく口内を犯す感覚に、赤葦は背筋を思わずぞくりと震わせる。木兎はこの時、ただキスをするだけでは終われなかった。
……それほどまでに、彼の中の想いは大きくなりすぎていた。
ようやく唇が離れた時には、2人の息は乱れ、赤葦は抵抗する素振りすらなくぼーっと木兎を見る。
「ぼ、くと、さん……」
「………赤葦」
女性以上に色気のある表情をする赤葦。そんな彼と視線が交わる度、木兎は心臓を鷲掴みされたような気分になる。
―――好きだ。
好きだ。
好きだ。
好きだ。
赤葦――――。