第5章 せんこう、がんこう【後編】
「木兎さんが話したいことって…もしかして」
と、赤葦が切り出す。
彼も彼なりに、不安だった。
全国レベルの大エースを、自分のせいで潰してしまっているのではないかと――恐れていた。
もし、最近の木兎さんの不調の原因が自分だったりしたら。
これからの試合でも、それが影響してしまうようなものなら――……。俺はどうすればいいのだろう。
そんな赤葦の心境を知らない木兎はその言葉を聞くと途端に取り乱して、彼の次の言葉をかき消した。
「俺!!から……言う」
息が乱れる。
視線が交わると、ひどく心臓が脈打つ。
頬が熱くなっていくのが自分でも分かった。
そんな木兎の様子を見たからなのか、赤葦は話すのをやめ、じっと彼を見つめる。
「なんか、悪かった。お前に心配というか……迷惑かけたみたいで……」
「心配も迷惑も、かけてないです。そんなのを迷惑と呼んでたら、俺今やってられないですから」
赤葦がふと、小さく笑う。
そんな彼に、また欲情してしまいそうになるのを木兎は必死に我慢していた。