第5章 せんこう、がんこう【後編】
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「木兎さん」
「あ、赤葦…」
部活が終わり体育館の鍵締めを終えた赤葦が、部室にやってくる。そこで部誌を書いていた木兎は、はっとして赤葦に視線を向けた。
なんの躊躇もなく自分の向かいに座り、「また誤字多いです」と部誌に目を落として言う赤葦に、木兎は複雑な気持ちになった。
――怒ってはいないだろうか。
――もう、既に嫌われているのではないだろうか。
トレーニングメニューと、今日の練習中のチームの雰囲気などを書き記している間―――少し沈黙が続く。
―――……
―――……
「……あの」
その沈黙を破ったのは、赤葦だった。
彼は部誌から視線を外さず、ぼそっと呟くように言う。木兎はそれに「なんだ」と、戸惑ったように応えた。