第5章 せんこう、がんこう【後編】
「へいへいへーい!」
午後7時30分。
部活がもうそろそろ終わるという頃に、木兎は憂さ晴らしも兼ねてサーブ練習を始めた。
その様子を、赤葦はただ見ている。一つ、自身に芽生えた疑問を胸に抱えながら。
――木兎さんの様子が最近おかしい。
この間のミーティングの後に言っていた事がきっかけであるのは、赤葦にも分かっていた。ただでさえ色々分かり易い木兎の、分かり易過ぎるあの態度。
……何かあるなら言ってほしいのに。
「俺が関係してるなら……尚更」
赤葦はすこしイライラしながら、モップをかける。
さっきの木兎は、赤葦が知っている彼とは少し違った。いつもはキラキラ澄んだ目で真っ直ぐと見てくれていたのに、「話がある」とようやく言ってくれた時には顔すら見てくれなかった。
それが少し寂しくて、余計に焦りを生む。
木兎さん。
俺に、何を話す気なんですか。
マイナスな事じゃないといい。
俺にとって。
木兎さんにとって。
そして、チームにとって―――……