第4章 せんこう、がんこう【前編】
隠し通せる訳がないとは思う。
――だけど。
うちの主将は伊達じゃない。
そう思い、木葉は黙って見守ってみることにした。
*
「――あの、木兎さん?」
「な、なに」
木葉と話をした翌日から、彼が予想していた通り、木兎は赤葦となにやらギクシャクしている様子だった。
木兎はといえば。
赤葦を見る度に、“あの衝動”が芽生えて仕方がなかった。
――やっべぇ……
赤葦にキスしたい。
キス、したい。
この数日間、なんとか我慢してきたつもりだった。だけどそれも既に限界にきている。
好きだと自覚してから、木兎の目には赤葦がひどく性的に見えてしまうのである。
――でも、我慢すると決めた。
今は言わないと決めた。
決めたはずなのに。
「最近調子悪いみたいですけど、大丈夫ですか」
そう聞いてくる赤葦を、木兎は舐めまわすように見てしまう。
そんな自分に、ひどく罪悪感を覚えた。