第4章 せんこう、がんこう【前編】
「とりあえず、今はこんままでいいわ」
「は?」
木兎は頬杖をつきながら、窓の外を見つつそう言った。木葉はまたしても予想を反する彼の発言に、思わず気が抜ける。
「こんままって、言わねーの?」
「……んー、まぁ。言ったところで困らせるだけだろ。これから春高予選だし、あいつに余計な負担かけさせる訳にいかねーよ」
思いのほか真剣に木兎がそう言うので、木葉は思わず「いつも赤葦に頼ってばっかだもんな」とツッコミを入れた。
――言わないのか。
多分、いつもの木兎なら
“へいへいへーい!男見せるぜ!”
みたいなノリで、直球で伝えにいきそうなもんなのに。
「やっぱ先輩は先輩なのかね?」
そんなふうにからかってやると。
「あぁ?!あったり前だろ!俺は赤葦より1年早く生まれてるからな!」
通常運転の木兎に、木葉は眉を下げつつ、「そうじゃねーよ…」とまたツッコミを入れた。