第3章 君心地、春心地。
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「ん?んなことあったっけ?」
今現在、3年になった木兎光太郎はのほほんと梟谷バレー部の主将になっている。
そして部活後、着替え終わったら恒例のアイスを口に含んでそうやってとぼけて見せた。
「……ありましたよ、一応。俺あん時に思ったんすよ、“この人にトスを上げられる選手になろう”って」
珍しく本音を直球で言ってくる赤葦に、木兎は少し戸惑いつつ、「え?ほんとに!?」と目を輝かせた。
―――あの時のフォームは、忘れられない。
今はもう、見慣れてしまうほどだけど……
ということは、俺は少しは成長できているのだろうか。
と、赤葦は自分に問い掛けてみる。
………まぁ、でもそれは。
「木兎さん、俺って成長してますか?」
この人に聞くのが1番いいかな、とも思ったりするけれど。
木兎さんに聞いたところで、そんな期待するような返事は返ってこないはずで―――……