第3章 君心地、春心地。
「赤葦はすげーよ!」
予想外の返答にぽかん、としてしまう。にかっと笑ってそう言う木兎は、赤葦の頭をポンポンと軽く撫でると、「これからも俺にトス上げろよ」と言って、今度は優しくわらった。
―――不覚だった。
ドキっとしてしまった……
帰り道、少しときめいてしまった自分に頭を抱えながら、赤葦はふと空を仰ぐ。
2年生になって、約2ヵ月。
もうとっくに桜は散って、新緑が広がるこの時期でも、赤葦にはまだ、あの時見た桜の景色が目に焼き付いている。
……もう、1年も経っているのに。
あの日見た桜と、木兎さんのあのフォームを、俺は多分一生忘れないんだろうな。