第3章 君心地、春心地。
0.数秒。
バレーボールは、ボールを持てない球技。
僅かに触れられるその短すぎる時間でどう操るか、それが鍵となる。
―――強くなるための。
そして、
勝つための。
赤葦は木兎の希望通り、高めの大きく山なりになるトスを上げる。
いつになく、綺麗に上がった気がした。
そして。
「ヘイヘーイ!1本決めたんぜー!!」
そう叫び、木兎が跳んだ瞬間。
赤葦は一瞬のことにも関わらず、思わず固唾を呑んだ。
……なんて、綺麗なフォーム。
大きく、力強く振り下ろされたその右手は、ボールにヒットし、それは対角線上に鋭く捌かれる。
彼は、ようやく気付く。
木兎光太郎 は、全国でも注目されているほどのスパイカーだということに。