第3章 君心地、春心地。
「木兎光太郎。うちの2年のスパイカー」
木兎光太郎。
その名前に、赤葦は心当たりがあった。
だけど、思い出せない。
なんだったかな。
「すんませんん!!先輩!!ランニング行ってきたっす!」
しばらくすると、汗だくになった木兎が体育館に現れた。その時はもう他の部員はスパイク練習に入っており、赤葦は今日来ていない控えセッターの代わりに、スパイク練のボール出しをしていた。
……なんか、いちいちうるさい人だな。
赤葦はそう思いつつも、先輩相手にトスを上げていた。
……そして、何故かその先輩は、赤葦のトスの列にいたのである。
「……お前、1年?」
「はい」
―――これが、木兎と赤葦のファーストコンタクト。
木兎はにやっと笑うと、赤葦に山なりのボールを投げて言う。
「高めに頼むな――――――」
なぜだろう。
さっきとは違い、低くなったその声に―――少しドキッとしてしまう。