第2章 籠の中のお姫さま。
思いがけないテトの問いかけに 思わず困惑してしまう。テトは目尻を下げながら 私に何かを確認するかのように答えを待っている。
……今のこの暮らし。
私にとっての世界であるこの部屋には 私の大好きなものが何でも揃っている。必要な物があれば テトに言えばすぐに用意をしてくれる。テトとの勉学やお茶は楽しいし 嫌だなんて思ったこともない。
でも 窓の外を見るといつも思うの。外で楽しそうにしている人たちの中に どうして私は入れないのかしらって…。
『テト 勘違いしないで?私はとても幸せよ。ここの暮らしが嫌だから言ったわけじゃないの』
「はい…」
『ただ少し気になっただけよ。…テトには変なことを聞いてしまったわね。ごめんなさい』
「いえ。そろそろ勉学を始めましょう 姫様」
テトが笑みを浮かべる。でも分かるの。無理をしているってことぐらい。何年一緒にいると思ってるのよ。でも それを言わない私はいったい何なのかしらね。
テトの言葉に頷いた私は窓から離れ 読み書きの用意がされた机へと近寄りイスに腰掛けた。
「…マリネ姫様」
『なに?』
「もし この部屋から出るためには 他の国へ行かなければならないとしたら 姫様はどうなさいますか?」
『テトと一緒に行くわ』
「え?私とですか?」