第3章 自由とは愚かなり。
『え?あ…いえ。ずっと室内にいたので 剣は全く扱えません。いざという時は テトが守ってくれますし…』
父上から頂いたこの短剣も 護身用にと譲り受けたもの。さすがに室内で剣の稽古をするわけにいかないもの。テトからは一応使い方を教えてもらったけれど まるで分からなかったわ。
「そうなのか。テト殿は強いのだな」
『えぇ。アルスラーン様は剣を使えますか?』
「基礎はそれなりに出来ていると思う。最近は毎日のようにヴァフリーズが稽古をつけてくれているから 嫌でも身についてしまうよ…」
『ヴァフリーズさんに?ふふっ…私も教えてもらおうかしら』
クスクスと笑う私に アルスラーン様はなぜか放けたような表情をみせる。そんなアルスラーン様に私は首をかしげた。
どうしたのかしら。私がヴァフリーズさんに稽古をつけてもらうのがそんなに変なことなの?
「…その方がいい」
『え?』
「堅い話し方より 姫本来の話し方のほうが私としても話をしやすい。…姫はまだ 私を友として受け入れてはくれぬのか?」
『……アルスラーン様は 私のことを友として受け入れてくれているのですか?』
恐る恐るといった様子で私がそう問いかけると アルスラーン様は迷いなく「勿論だ」と答えてくれた。