第3章 自由とは愚かなり。
「姫の国はどうだったのだ?」
『え?』
「姫の国も たくさんの奴隷がいたのか?」
アルスラーン様にそう聞かれ 私は思わず息を呑んだ。冷たい汗が私の背中を伝っていく。
『…分かり…ません』
「え?分からない?えっと…それは どういうことなのだ?」
アルスラーン様は困惑したように私に問いかけてくる。私は気まずくなり アルスラーン様から視線を外し俯いた。
『私は1度も 外へ出たことがなかったんです』
「出たことが?閉じ込められていたということか?」
『…はい。私の世界はずっと この部屋と同じくらいの個室と その部屋の窓から見える景色だけでした』
ポツリポツリとゆっくり話す私の声を アルスラーン様は静かに聞いてくれている。
『窓から見る国はとても美しく豊かに見えました。…ですが それはもしかすると 綺麗な表の部分しか見せられていなかっただけかもしれません』
私の見えないところでは 誰かが苦しんでいたのかもしれない。私の知らない間に 何人もの人々が殺されていったのかもしれない。
どうして私はなにも知らないの?なにも分からないの?自分の国だというのに どうしてこんなにも…。
『私は自国のことを なにも知らなかったのね…』