第3章 自由とは愚かなり。
『どうかなさいましたか?アルスラーン様』
「そう堅くならないでくれ。聞くところによると 私とマリネ姫は同じ14なんだろう?」
『はい。ですが 私はここにお世話になる身。テトに礼儀を正しくしなさいと教えられました』
「テト…?ああ!姫の仕いの者か」
しまった!つい余計なことまで話してしまったわ。でも アルスラーン様は気にしていないようだから大丈夫かしら?
ジッと見つめる私に アルスラーン様は不思議そうに首をかしげた。その姿は 女の私から見てもとても可愛らしいものだった。
「私は姫と仲良くしたい。友達になりたいのだ。…それでも ダメか?」
『…っ』
まるで子犬のような瞳。そんな顔をされると断れないじゃない…!断ったら罪悪感で心が痛みそうだわ。
どうしたものかと考え込んでいると コツコツという足音がこちらに近付いてくるのが分かった。
「姫 殿下は王宮暮らしになって以来 同年代の友がいないのです。どうか殿下の友になっては下さいませんか?」
『え?あ…あなたは?』
「パルス王国の騎馬部隊でマルズバーンを務めているダリューンと申します」
全身が黒く 鍛え上げられた肉体。しかしアンドラゴラス王のように険しい顔ではなく とても優しい目をしている。