第3章 自由とは愚かなり。
早くこの場から去りたい。ここの空気はなんだか重くて嫌いだわ。今すぐにでもテトのそばへ行きたい衝動をグッとこらえ 私は少し俯いた。
しかし最後の1人。王子の挨拶が終わっていないことに気付いた私は 急いで顔をあげた。
「初めまして マリネ姫。私はアルスラーンだ。よろしく」
『よろしくお願いします』
このお方が 私と同い年という王子ね。アンドラゴラス王とタハミーネ王妃の間に生まれたとは思えないほどの優しい笑顔だわ。
アルスラーン様は私に向かって嬉しそうにニコリと笑みを向けてくれる。それにつられ 私もアルスラーン様に向かって笑みを浮かべた。
良かった…。アルスラーン様のようなお方がいるのなら この王宮でも暮らしていけそうな気がするわ。
「侍女に部屋の案内をさせます。何か必要な物があればその者に申しつけて下さい」
『分かりました。それでは 失礼します』
タハミーネ王妃にそう言われ 私は頭を深く下げると3人に背を向け テトと共に部屋を出た。扉のすぐ横には 侍女と思われる女性が2人立っていた。
「マリネ様はこちらへ」
「テト様はこちらでございます」
テトとは部屋が違うのね…。当たり前なのかもしれないけれど やっぱり寂しいわ。