第3章 自由とは愚かなり。
私は馬に近付き 逞しい体を撫でた。馬はこちらに顔を向け まるで私に「何だ?」とでも言っているよう。
『ありがとう。パルスで足を休ませてね。…また私を あなたの背に乗せてくれるかしら?』
「……ヒヒン!」
『ふふっ』
「姫様。行きますよ」
『えぇ。…またね』
最後に顔を一撫でし 私はテトとヴァフリーズさんの元へ駆け足で急いだ。
◆◇◆
「マリネ様はとてもお優しいのですね」
『そう…かしら』
王宮までの道のり。そこは人で溢れ帰り すれ違う度に私に向かって深くお辞儀をしてくれる。きっと前もって 私がここに来るのを知らせていたのね。
1人1人に手を振ったりお礼を言う私に ヴァフリーズさんは感心するようにそう言ってきた。
「実は私 パルスに姫が来ると聞き どんなわがまま娘が来るのやらと心配しておったのですよ」
『ふふっ。そうだったのですか。私はわがまま娘と思われていないようで安心したわ』
ヴァフリーズさんと笑いあっていると 後ろから何やらパタパタという足音が聞こえた。
「おひめさまー!」
『…?』
急に服の裾を捕まれ立ち止まる。その方へ視線を向けてみると 可愛いらしい女の子がお花の冠を手に笑顔を私に向けていた。