第6章 華の声
「やっぱりお前何か能力あんだろ。」
「ないわ。」
「じゃあ何で俺の心が分かるんだよ!」
「前にも言ったじゃない。あなたは分かりやすいって。」
サボはラーラを見つめた。
本当に心を読んでいるのでは?
恐ろしいくらいに理解している。
「…。」
「信じてよ。」
「いや…怖いな……。」
「心なんて読めないわ。ただ…」
「ただ?」
「ただ…母親に相手の感情を理解する方法を習っただけ。」
ずっと前に教えてもらった。
相手の目を見ると分かるんだって。
そのときは全然できなかったけど、今になって開花してきたのね。
「すごいな。」
「そうでもないよ。簡単だから。」
「簡単って…」
簡単なワケねェだろ。
普通の人間じゃできねェ。
心を読んでるんじゃないのか・・・。
分かるんだ。
「頼むから俺の考えてること知るのやめてくれ。」
「別に…知りたいわけじゃない。」
「言っておくが、俺はお前を諦めないからな。」
「無駄なのに…。」
私の気持ちは変わらない。
愛することができない。
分かってくれなくていい。
諦めてほしい。
「無駄じゃない。俺は好きでいたいんだ!」
「もう…しつこい。」
「じゃ…」
自分自身の感覚を疑った。
何でこんなことになったんだろう。
私は一切望んではいないのに・・・。
唇がそっと重なってすぐに離れた。
ラーラは目を見開いて硬直する。
状況が掴めない。
サボも照れくさそうに目をそらした。
そして小さく呟いた。
「ごめん…」
「あ…、何……で…」
こんなことって・・・ある?
サボがキスした・・・。
何で?
私はまだ何も言ってない。
それでも怒りは沸いてこなかった。
いつもならキレている。
でも何故かそれより驚きのほうが大きかった。
「おい…」
「へ?あ、うん。何?」
「いや…ほんとにごめん。」
「そうじゃなくて…」
「傷ついたよな…。」
「そんなんじゃなくてさ…びっくりして……」
嫌だった?って聞かれても、
嫌だったって答えられない。
正直なところ不快に感じなかったからだ。
でも・・・どうして?