第6章 華の声
「絶対にエリィアーノ・アーシャを殺す。」
ラーラの顔に不明な表情が浮かぶ。
その表情には残酷なほど光る琥珀の瞳があった。
想像しているのだろう。
エリィアーノ・アーシャを切り裂く光景を。
決して負けない。
「あいつに勝って、双剣をシルラ宮殿に戻して私が正常に戻ったら…」
普通に生きよう。
それまで生きていればだが。
「アハハッ!アハッアッハッハハハハ!!」
狂ったように笑い出す。
ラーラは天に手を突き上げた。
「さっさと私を殺してよ!!ねェ!!アーシャ殺したらすぐに私を消し去ってよ!!」
低く言い放った。
口元は驚くくらいにつり上がっている。
嗤った。
天を嘲嗤った。
何もできやしないんだから。
私と同じで使えないのね。
サボは物陰からそっと聞いていた。
顔は翳っていて表情は分からない。
「あーあ。結局生きてるんだから。もっと私を苦しめればいいわ!受けて立とうじゃないの。何があったっていいわ!幸運?不幸?どっちでもいいわ!!アッハハハハ!!!」
嗤うラーラの目には、光がなかった。
壊れている。
心は壊れている。
サボは止まっていられずに飛び出してラーラを抱きしめた。
「ッ!!!」
「もうやめろ。」
「離せ!」
「自分を傷つけるな。お前は…お前の意思は暴走している。」
「!!?」
私・・・何を言っていたの?
あれ・・・?
あれ?
何で・・・。
ワケが分からないという顔をしたラーラを見てサボは気づいた。
「お前じゃないな…。さっき喋ってたのはお前を…お前にとりついた何かだ。」
「私…何してたっけ……?」
「嘘だろおい。」
「あれ?」
「おい、しっかりしろ!」
ラーラの瞳が色を変えた。
闇のように真っ暗な漆黒へと・・・。
可笑しい。
「離せよ。触るんじゃねェよ!」
「大丈夫なのか?」
琥珀の涙が黒色の光を放つ。
まるで今のラーラのような真っ黒な光を。
サボはそれに気づいた。
「これか!この剣がお前を操っているんだ!!」
「アッハハハハっ!!」
サボは急いで剣を抜き取った。
途端に光は止まった。
「ふぅ。よかっ…!!」
目の前のラーラがスローモーションのように前に倒れた。
バタン………