第5章 華の唄
「サボ…!」
「生まれてこなければなんて思うな!」
「う、うるさい!…私は……」
「お前は生きるために生まれてきたんだ。」
サボは分かっていない。
ラーラが手袋を外して触れれば全てのものが壊れてしまう。
人でさえ。
「俺が守る。」
「守らないで!!何て勝手なの!?」
「俺は勝手さ。」
「開き直ってなんなのあんたは!」
「お前は過去を引きずり過ぎだ。籠に囚われてるのはお前のほうだ!」
「なんですって…」
私が籠の中の鳥だとでも言いたいの?
何故そうなるの?
「過去という籠にに囚われてんだお前は!」
「それはあなたも同じよ!!」
「俺もお前も似てるんだ。」
「一緒にしないで!私はあなたよりも強い!!」
ラーラは顔を歪めた。
怒りで叫んだ。
過去を引きずってるのは確かだ。
だが後悔とそれは違う。
「私は後悔なんかしない!」
「後悔してるのも同じだ!」
「フザけたこと言わないでよ!!」
バシッ
乾いた音が響いた。
サボの目の前には瞳に怒りを湛えたラーラがいる。
サボは殴られた頬を触った。
「私の気持ちを知らないくせにとやかく言わないで。」
「知ろうとしてるから言ってるんだ!」
「もう…放っておいてよ。」
ラーラは踵を返して部屋に走り去った。
怒りしかない。
何故分からないんだろう。
この気持ちはきっと理解されないんだ。
「馬鹿…」
ラーラは泣いた。
一筋の涙を零して。
「生まれてこなきゃよかっただと?…フザけんなよ。」
生きてんだから生きろよ。
ワケ分かんねェよ。
どうして死にたいなんて思えるんだ?
理解したくもねェ。
「絶対に死なせてたまるか。」
錯誤する2人の意思。
交わることなくただ伸びていくだけの線。