第5章 華の唄
「ありがとう。でも私は一人で何も出来ない子供じゃない。」
「ったく…手を貸してんだから正直に…」
「正直?今言ったこと全部本音よ。私は必要でない限り誰にでもお世辞とか嘘とか言わないから。」
「ハッキリ言うな!」
ラーラは立ち上がってサボに軽蔑の目を向けた。
サボは何故そんな目で見られるのか分からずに戸惑った。
「自分を騙して楽しい?」
「え…」
「偽りとか嘘とか偽者とか、信じてるのならあなた自身も偽善者よ。」
「何言ってるのか…」
「罪の意識から逃れるために自分に嘘をつくから後悔が生まれる。私は後悔に呑み込まれたくないから嘘も偽りも言わない。」
「…」
遠まわしにエースのことを言っているのか?
それとも自分に宛てて?
確かに俺はエースのことを後悔した。
今も尚しているのかもしれない。
それを咎めているのか?
「精神攻撃されたらあなたは終わりね。」
「俺はッ!」
「あなたは自分が許せないんでしょ。エース…兄弟を助けに行かなかったことを悔いてるわ。」
「あぁ、そうだよ!だが俺は乗り越えた。」
「上っ面ばっかり!」
ラーラは憤慨した。
サボに正直になれと言われたことが納得いかない。
正直じゃないのはサボのほうだと思う。
「偽善者は嫌いよ。あなたはアーシャと似てる。」
「なっ…!」
「言いたいことも言えないくらい狭い籠に閉じ込められてるのよあなたは。」
「籠?」
「本当の自分を認めることができないから辛いのよ。…あ、仕事は来なさいね。」
そういい捨てて部屋を後にした。
気に入らないものは精神から、内側から責めて変えていく。
でもそれが”革命”でしょ?
自分を変えられない籠なんて私にはないわ。
私が本当の自由なのだから。
「あなたはまだ分かっていない。自分が籠にいることも分からないのよ。」
「俺が籠の中にいるだと?」
意味が分からない。
ずけずけ言いやがって。
何故俺は言い返せない?
あいつの言っていることが図星だからか?
サボの思考はそれ以上を求めなかった。
分からないならそれでいい。
「まぁ、久しぶりに仕事でも…」