第4章 人形部屋の管理人
程なくして、私達は例の扉の前まで戻ってきた。
「おせえ!どんだけ待たせやが…フゴアッ!?」
扉の元について早々、シロノは言葉通りに扉の大きな口に人形を突っ込んだ。
うわ、本当にやったよ…。
突然のことに私まで驚いてしまった。
しかし一気に入らなかったようで、扉がもがもがと苦しそうに呻くが、シロノはお構いなしに扉に方足を掛けて無理やり押し込もうとしている。
「はーい、もっと大きく口開けてー。急いで良く噛まずに飲み込もうねー?」
「ンガガガゴゴブフェアッ!!?」
「……」
地獄絵図だ。あまりの惨状にモザイクが掛かって見える。
最早どっちが悪だかわからない。
そしてついに、扉は人形をごくりと飲み込んだ。
「げふぉえっ、てめ…!なにすんだ!飲み込んじまったじゃねーか!!」
「よかったね、あれは君が望んだものだよ。お腹は膨れたかな?」
「ふざけんな!味わう余裕もなかったつの!つかちけぇんだよ、あっち行け!ぺっぺ!」
そう言われて、シロノはくすくすと笑いながら扉から離れて私の隣に戻る。
それを確認すると、扉は私に話し掛けてきた。
「ふぅ…ったく、おい女!」
「えっ!?な、なに?」
「今のは本当に人間なんだろうな?」
一瞬ドキリとした。
勿論、今扉に食べさせたのは人間ではなくそれに良く似た人形だ。
でもそれを素直に言うわけにもいかない。
「も、もちろん!もう、ちゃんと味わって食べないからわかんなかったんでしょ!」
「味わえねー状況にあったのお前見てたよな」
しっかり見てました。ごめんなさい。
心の中で懺悔していると、扉が大きくため息を吐いた。
やっぱり駄目だったかな…。
「仕方ねーな…。わかった、通してやるよ」
「え!?ほんとに!?」
驚いて扉を見ると、大きな口は不満そうにへの字に曲がっていた。
「約束だからな。仕方なく!仕方なくだ!
…まぁ、ちったぁ空腹が紛れたし通してやるよ」
「あ、ありがとう」
「よかったね、優衣ちゃん」
「うん…」
この扉、いじわるだけど実はいいヒトだったんだ…。
なんだか、騙してしまった事への罪悪感で物凄く心が痛い。許せ、扉。