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リアルナイトメア

第3章 不気味な部屋


「僕でいいなら楽だったのにね」

「だ、駄目だよ!もしさっき、あの扉がそれでも良いって言ってたら食べられちゃってたかもしれないのにっ」


私がそう言うと、シロノはニコニコしながら「腕の一本くらいなら大丈夫だよ」ととんでもない事を言い出したので、その背中をペシリと叩いた。


「全然大丈夫じゃないからっ!絶対駄目だからね!」

「わかったよ、優衣ちゃん」


クスクスと笑うシロノ。
本当にわかっているのだろうか。シロノは冗談なのか本気なのかわからない所がある。
一つため息をついてふと視線を落とすと、廊下の端に何かが落ちているのが目に入った。
黒くて細長いもの。ペンだろうか。さっきは落ちてなかったような気もするけど。

不思議に思ってそれを拾い上げると、それは万年筆のようだった。


「なんでこんな所に…」


淡い燭台の灯火に翳すと、黒い万年筆は妖しく朱色に煌めいた。
綺麗だけど、どことなく不気味ささえ感じる。


「誰かの落し物かな?」


いつの間に近くに来たのか、シロノがひょいと万年筆を覗き込んできた。


「という事は、私達の他にも人がいる…?」

「さあ、どうだろうね?誰かと言ってもそれが人とは限らない」


その言葉に、えっと驚いてシロノを見ると、いつもの笑みが視界に入る。


「ここには色んな“ヒト”がいるからね。とりあえず、それは君が持っておいで。もしかしたら、持ち主が現れるかもしれないよ?」


そう言って、シロノは私に万年筆をしっかりと握らせた。
“色んなヒト”と言うのはつまり、私を追い掛けてきたぬいぐるみや、喋る扉のような者達を指しているのだろうか。
だとしたら不安しかない。


「へ、変なのとか来ないよね…?」

「どうかな?案外普通の人間かもしれないよ?そうしたら扉の先に行けるね」

「食べさせる気!?仮に普通の人だとしても渡さないからね!」

「そう?優衣ちゃんは優しいね」

「優しいとかそういう問題じゃない…」


見付けた人間を扉の食事として渡すこと。シロノなら本当にやりかねない。自らの体さえ差し出そうとしたのだから、しっかりと釘を刺しておかないと。
扉には申し訳ないが、人間ではない何か別のもので妥協してもらうしかない。
とりあえず扉が言っていた“妙なもの”でなければいいだろう。多分。

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