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リアルナイトメア

第3章 不気味な部屋


「……えっと、今なんて…?」

『あぁ?だから人間だよ。オレは人間が喰いてぇの』


こともなげにそう言ってのけた扉に、私は眩暈を覚えた。
人間が食べたいなんて、聞き間違いであって欲しかった…。


「人間だなんて、そんなの無理だよ…」

『なら諦めろ。ここは通せない』

「そんな…」


さっき通すって言ったのに…!

扉は、ふん、と鼻(?)を鳴らして口を閉ざしてしまう。
腹が減ったから人間を連れて来いって言われて、はいわかりましたなんて言えるはずがない。
そんな無理な条件を飲めだなんて、この扉は本当にここを通す気があるのだろうか。
でも他に道はないし、強行突破できるような相手でもない。

どうしたらいいんだろう、と頭を抱えていると、隣で変わらず口元に笑みを浮かべていたシロノが口を開いた。


「じゃあ、代わりに僕を食べるっていうのはどうかな?」

「な…っ!?」


なに言ってるの!?と言うより先に、扉が悲鳴を上げた。


『げぇえ!!冗談じゃないっ!!お前なんか喰ったら腹壊すどころじゃ済まねぇ!ペッぺ!』

「酷い言い様だね」


シロノは仕方ない、と言うと私の方を振り返り、いつもの笑みを浮かべた。


「行こうか、優衣ちゃん」

「え…、行くってどこに…?」

「勿論、彼の望むモノを探しに。僕じゃあ駄目みたいだから、代わりを見付けないとね」


おいで、とシロノは扉に背を向けて歩き出す。
すると扉が、不安とも安堵とも取れる溜息をついた。


『……妙なもん持ってくるなよ』


それはちょっと約束できないかもしれない。
私は戸惑いながらも先に行ったシロノの後を追って、またほの暗い廊下へと足を進めた。



――――――――――――――――――――



「ねぇ、代わりを見付けるって、どうするの?」


さっきと同じ様に、私の少し前を歩くシロノにそう問いかけると、彼は歩みを止めずに答えた。


「ここは広いし、まだ中を確認していない部屋がいくつもある。根気強く探索すれば何かあると思うよ」

「でも代わりだなんてそんなの…」


あるわけない。
仮にここに私達以外に誰か人がいたとしても、その人をあの扉の食事として捧げることは絶対にしたくない。






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