第2章 行く手を阻むもの
この扉は、シロノの事を知っているようだった。
酷く毛嫌いしているようだけど、余所者というのはどういう事なのか。
単にここの住人でないだけなら、私だってそのはずだ。
ますますシロノという人物がわからなくなってしまった。
「どうする、優衣ちゃん。この先に行くには、ここを通らないと行けないみたいだけど」
「困ったね」と、さして困ってなさそうな声で言うシロノに慌てて「うん」と返した。
そうだ、今はとにかく先に進まなくては。気になった事は後で聞けばいい。
さっきのような事があっては困るので、私は扉と一定の距離を取って話し掛けた。
「あの、私達この先に行きたいの。通してくれない?」
『ああ?なんだよお前、こっから出たいのか?』
「う、うん」
大きな口の付いた扉が『ふーん』と、私を見定めるように蠢く。目が付いている訳でもないのに、妙に居心地が悪い。
『ま、いいけどよ…人にものを頼む時はもっと言い方ってもんがあるだろ?』
「君は人じゃなくて扉だよね」
『うるせぇ余所者!オレは今この女と話してんだ!』
「はいはい」
くすくすと楽しそうなシロノとは反対に、すこぶる機嫌が悪そうな扉。
扉は大きく舌打ちをして恐らく私を見た。
『で、どうすんだ?俺に通して下さいって言うのか、言わないのか』
「うっ」
そんな上から目線の言い方をされると、なんとなく言いたくなくなる。
でも、ただ通して下さいってお願いするだけだ。言えば通してくれる。そうだ、たった一回言うだけなんだから…!
私は自分にそう言い聞かせて口を開いた。
「ここを通して下さい」
『お願いします、も付けろ』
「……お願いします、通して下さい」
『はっ、やだね』
どうしよう。ぶん殴りたい。
でも相手は扉だ。殴った所でこっちが痛いだけだし、そもそも扉にダメージが行くのかも怪しい。
というか、人に言わせるだけ言わせてそれはないでしょ…!?
やり場のない憤りを感じていると、私の横にいたシロノが扉に歩み寄って行った。
「…シロノ?」
『げっ!?く、来んな!!』
扉は酷く動揺した声でシロノを止めようとするが、お得意の口は出さないようだ。
シロノはその制止の叫びを無視して進み、扉のすぐ前で止まる。
…そして