第2章 行く手を阻むもの
ぺたりと、扉に触れた。
『おっぎゃあああああああああああ!!?』
扉はシロノに殴られた訳でもないのに、ただ触れられただけでこの世の終わりのような声で絶叫した。
あまりの悲鳴に驚いていると、扉が今度は大量の冷や汗を流し出す。…扉なのに汗出るんだ。
『おおおおおまっ、さ、触るな!!オレに触るな!!』
「へぇ、僕に触られるのがそんなに嫌なんだ?傷付くなぁ」
そう言いながらも、楽しそうにぺたぺたと扉に触るシロノ。
『ヒィイイッ!!や、やめろ!蕁麻疹が!蕁麻疹が出る…っ!!』
「扉なのに蕁麻疹なんて出るの君?面白いね。じゃあ、こっちも触ってみようか」
『うぎゃあああああああああああああッ!!』
「………」
なんだか可哀想になってきた。
いや、自業自得なんだろうけど…。
今のうちに止めないと、本当に蕁麻疹が出てしまうかもしれない。
私は未だぺたぺたと触り続けているシロノを止める事にした。
「シ、シロノ!」
「うん?なぁに優衣ちゃん?」
「可哀想だから、そろそろやめてあげて…」
そう言うと、シロノは「そう?わかったよ」とようやく扉から手を離す。
シロノから解放された扉は、ぜぇぜぇと息を荒くしていた。
『ち、畜生…てめ、ふざけやがって…覚えてろよ…』
「うん、覚えていてあげるから、ここを通してくれないかな?」
『だ、誰が…!!いや、通す。通すからお前マジこっち来んな』
通さないと言い張ろうとした扉に、シロノがにこりと笑みを浮かべて近付こうとすると、扉はついに「通す」と言ってくれた。
「!通してくれるの?」
『ああ。ただし、条件がある』
「…え、条件?」
この扉の性格上、どんな事を要求されるのかと警戒してしまう。
土下座して頼めとか言われたらどうしよう…。
しかし、扉が出した条件は意外と普通なものだった。
『オレは腹が減った。だからオレの望んだ食い物を持って来い』
扉は、そしたらここを通してやると言う。
食べ物か。ここに食べ物があるのかどうかは怪しいが、探せば何かあるかもしれない。
「まぁ、それくらいなら…」
『ふん、なら早く持って来いよ。オレは…
“人間”が喰いたい』
「…………え?」
出されたのは無理難題だった。