第1章 高校1年生編
5月に入り、高校生活も早いものでひと月が経とうとしていた。
文武両道を掲げるこの高校では、在校生のほとんどが何かしらの部活に入部していた。
そんな俺も中学校から続けていた弓道部に入部を決め、先輩たちに囲まれながら活動をしていた。
中学校時代に全国大会優勝という経歴を持つ俺は、部活動勧誘の際には在籍クラスを把握していた3年の先輩方の出待ちをくらい、有無を言わさず弓道場に連れていかれたのはまだ記憶に新しい。
「いやぁ、うちは君が入部してくれたから、今年は1年生の入部数が多いわ~」
「そうなんですか?」
「やっぱイケメンが入ると部活も活気に溢れますね、部長!」
「そうだな!君のおかげで部員が増えて良かったよ!」
「はぁ・・、しかし部長。俺はイケメンではありません。」
なんだか自分が客寄せパンダのような気がして仕方がない。
だが、中学時代から好奇な目線にさらされることは慣れているので、あまり気にしないことにしよう。
「ですが部長、こんなに多いと練習場所が無くなりますよ?」
先輩が部長に問う。
「なぁに、うちはのやつを目当てに入部したやつらはそう長くは続かないさ。」
意外とこの部長は考えているらしい。
まがいなりにもインターハイ常連の我が弓道部が、男目当てに入部するような軽い気持ちの人に続けることはできないだろう。
それの考えは一理あると思った。
そんなことを考えていたら、楽器の音が聞こえてきた。
統一性のない音からすると、おそらく個人練習の時間なのだろう。
校舎のいたるところから音が聞こえてくる。
ふと、校舎を見上げると窓際に楽器を持った浅葱の姿が見えた。
真剣な表情で一点を見据え、楽器を吹いている。
「(そういえば吹奏楽部に入部したと言っていたな。)」
先日彼女には出待ちされ、弓道部に連れて行かれるシーンを見られていたため、次の日の会話はその時の話から始まった。