第1章 高校1年生編
入学式も新入生代表挨拶も無事に終わり、教室でLHRが始まるまでの休み時間、俺は自分の席から周りを見渡して浅葱の姿を探していた。
入学式の前に友達のもとへ行ったあと、彼女が教室に再び姿を現したのは集合時間ギリギリの頃だった。
周りの生徒たちも緊張からか、担任の先生が来るまでほとんどしゃべることはなく、とてもじゃないが浅葱に話しかけられる雰囲気ではなかった。
きょろきょろと周りを探していると後ろから浅葱の声がした。
『うちは君、そんなにきょろきょろしてどうしたの?』
「いや、このクラスに知り合いはいるかと思って探していたんだ。」
浅葱、お前を探していた、とはさすがに言えなかったのでとっさに嘘をついてしまった。
『なるほど、そういうことね!』
彼女は俺の言葉を聞いて納得したようだ。
「そろそろLHRの時間だから席に着きなさい。」
そんなやりとりをしていたら担任がやってきて、みんなあわてて座席に着いた。
入学式の日はLHRが終わるとすぐに下校だ。
今日は弟のサスケが午後から中学校の入学式のため、早く帰れば弟の晴れ姿が拝める。
兄弟そろって入学式だったので、今日は父も母も1日仕事はお休みだ。
ふと、隣の席を見ると浅葱も帰り仕度をしていた。
「浅葱、また明日な。」
『うちは君、また明日!これから親と一緒に帰るの?』
「いや、父さんと母さんは先に帰ったよ。弟が午後から入学式だからその準備で。」
『入学式のはしごかぁ~、大変だね。』
「そうだな、でもそのおかげで俺も弟の入学式に行けるんだけどな。」
『兄弟の仲がいいんだね、うらやましいな。』
「浅葱は兄弟はいないのかい?」
『ううん、いるよ。妹と弟が。』
「じゃあいいじゃないか。」
『お互いの入学式に出るほどの仲ではないってことだよ。』
話をしているうちに帰る準備ができたようだ。
『じゃあうちは君、さようなら!』
「あぁ、さようなら。」
片手をあげてパタパタと小走りで教室を出ていこうとする彼女を目で追いかける。
すると、あっと声をあげて、彼女がこちらを振り返った。
『言うの忘れてた!うちは君、代表挨拶お疲れ様!とってもよかったよ!』