第2章 左手
俺は弥絵が実際に編んでる姿はいっぺんも見たことないけど、ホント相当だったと思うよ。仕事、結構忙しい人だから。家帰ってもそんなに時間ないと思うのよ。何だかんだ家に持ち帰ってやってることもあるし、家事もまあまあちゃんとやる人だから。三度の飯もキッチリ食べるし、作れる時は基本作ってる。
だからさ
ほんっっっとに、大変だったと思うの。こいつを、ここまで、それこそパッと見は市販品に見え…なくもない…かもしれない…ってくらい、ここまでの形にするのがさ?
だから
使うよ。俺は。
だって嬉しかったもん。ホントに嬉しかった。結局のところこれは何のプレゼントなのかもよくわかってないんだけど…。ま、誕生日?なのかな?当日違うもの貰ってるんだけども。
基本車移動、スタジオ収録で出番はホント少ないけど、「いつだ?いつデビューできるんだっ?」って。毎日持ち歩いてましたよ、実は。
だから、さ。
松「もしかして…彼女からのプレゼントですかっ?」
櫻「おっ。マジ?ヒューヒューだよっ♪」
相「え、そーなのっ?」
大「え、ニノ彼女いたのっ!?」
二「…」
最後の失礼なコメントはさておいて。
いいんですよ。こんな、「からかってください」と言わんばかりのシチュエーションでしか使う機会がなかったとしても。ようやく、よーやく、デビューさせてやれたんだから!
本来の役割を果たせてコイツも本望だよ、きっと。作り手が何思いながら編んでたかは、俺には図り切れないけどもさ。えっらい長期間だったし。すげーマイナスな気持ちも織り込まれちゃってるかもしんないけども。
でも、ちゃんと。確実にこの手を、あっためてくれてるよ。今、この寒さを防いでくれてる。ちゃんと俺の役に立ってるよっ。