第1章 右手
Jの見立て通り、これは既製品じゃない。
ぶっちゃけ彼女さんからのプレゼントです。手編みの、手袋。基本しないからさ。手袋。わかってたらそう言ってたけど…ま、サプライズ?だったから。何も言えなかった。てか、何も言えるハズがない。
俺、コイツが育ってくのを、ずっと見守ってたんだから。
気付いたのは秋くらい…だったかな。コッソリ何かやってんな~って。ま、言うても一緒に住んでるわけじゃないからさ。彼女ん家に行った時、見つけちゃったっていうか。たまたまね?
クリスマス用かな~?って。ま、俺のかもわかんなかったし、何も聞かなかったよ。サイズ聞かれたりもしてないし。俺のじゃなかったら…逆にアレだし。
で
くれたのは正月休みに会ったとき。やっぱり俺のだったみたいで。ビックリさせたくて、サイズもコッソリ寝てる間に測ったとか…。
うん。まあまあ、ね?そういうの聞くとさ。やっぱり嬉しいわけ。手袋、しないんだけども。基本ね?でもそれとこれとは別問題ですから。
結構ね、不器用なの。弥絵さん。あ、彼女ね?たぶんだけど、毛糸いじったことそんなないと思う。…ていうのが見てわかるくらい、随所に頑張った感が満ち溢れてます(笑)。そして何より…その制作日数ね。
俺はてっきり、クリスマス狙いだったのが間に合わなくての正月明け…だと思ってたの。でも本当は誕生日にくれるハズだった、ってのには「えっ!?」だった。素で。
だってさ。そうなってくると、コイツは一体いつから作り始めたんだ?って。一体全体、どんだけの時間を費やされたシロモノなわけ??ってなってくるでしょ。
弥絵的には、コレを俺の誕生日に渡して、
「あ、ありがとう…」
「うん♪」
「って今、夏だしっ!」
ってなツッコミを期待してたんだって(笑)。
それがまあ、季節二つ飛んでいわゆる手袋的にはベストシーズンに完成して…。いいのか悪いのかはわかんないけど。今に至る。