第4章 >>3 深夜徘徊は駄目な件
時刻は既に12時を回っていた。
シンデレラ達は靴のみならず、服をも脱ぎ捨て男の股間に頭を埋める。
そんなシンデレラ達も、僕からすればえらいなあと。
僕には一向に理解出来ないよ、と。
繁華街をふらふらと歩く。
時折上がる胃液は、飲みすぎた事を意味していた。
『……だっる………。』
身体は限界なのに、脳がまだ飲もうよと言いたげに働く。
ちらつく赤提灯を何度も見て、ため息をついた。
行き交う人は僕の事なんて気にせず歩く。
良いぞ。
これこそ、これこそが人間だ。
そんな事を考えて俯いていると、ふと視線に足が止まる。
『………あ?』
視線を上に向けると、黒いスーツに身を包んだ長身の男が居た。
「岩ちゃーん!どしたのどしたのー??」
その後ろからまた黒スーツの長身が。
そいつは如何にもホストという風貌で、身体中から酒と煙草、それと化粧品と香水の臭いを漂わせていた。
『……なんすか?』
口元を拭い、パーカーのフードをぐっと被り拒絶のサインをする。
「お前顔色悪いぞ?家どこだ?送ってくぞ??」
思わず目を丸くさせてしまう。
こいつは何を言ってるんだ。
「は?!岩ちゃんこんなくそガキ放置しよーよ、未成年なのに馬鹿みたいに飲んだんだよきっと!絶対面倒臭いって、しかも…男じゃん!!」
ガツーン────
どうやら彼らに男だと思われているようで、更には未成年だとも思われているようで、僕は何とも言えない気持ちになった。
そんな事より、自宅は絶対に駄目だ。
適当にやり過ごそう。
『…大丈夫。』
控えめにそう呟いて、何とかこの場から立ち去ろうとする、が。
「おいっ!」
ぐらりと揺らめく視線に、自分が転倒しそうになった事を自覚する。
ふわりと香る、石鹸の様な爽やかな香水の匂い。
誰かの腕に抱かれた様だ。
「ひゃー!岩ちゃんに抱きしめられるとか、8000円くらいの価値だよ!」
「微妙な金額出すなクソ及川!」
こういう時、人って咄嗟には動けないんだなあ…と、身体とは正反対に冷静に考えてしまった。
『本当に大丈夫だから…帰れるんで。』
そっと離れると、距離を置く。
こいつらとこれ以上関わりたくない。
素直にそう思った。
「ふらふらじゃねーか!良いから来いっ…!!」
岩ちゃんと呼ばれた男にひょいと抱えられてしまう。
何だこの状況。