第18章 >>16 心の屈折な件(描写注意)
「やめてヨー!クソ生意気なメガネくんと、ドライボーイアカーシが死んじゃうよぉー!」
何処からともなく聞こえるこの声を私は知っている。
いつもいつも、脳裏をよぎるあの顔。
「及川に言われて来たけどこれどーよ松。」
「俺らだけじゃしんどいから、天童呼んだ。」
「じゃあ俺ら要らねぇーだろ。」
誰かわからない。声が聞こえる。
この際誰でもいい。
このクソくだらない映画を早く止めてくれ。
私のせいで、二人が、二人が。
「誰だよ!!」
男が慌てて叫ぶ。
その声を聞いて笑い声がどっと起きる。
「ミラクルボーイ、覚!参上ッ!」
暗い暗い闇から現れたのは、空のペットボトルと果物ナイフを持って、ヒーローの様なポーズをとる天童覚さん。
その後ろから、やる気無さげに二人の男が現れる。
『天童...さんっ...と...誰?』
「ええええええ!怖い、怖いよ松!忘れられてる!」
「いや、酔ってたから覚えて無いんだろう。」
松と呼ばれた男に抱き抱えられる。
「鼻、折れてないと良いけど。後は二人に任せて、病院行くべ。」
どんどん遠ざかる赤葦さんと月島さん。
不安が募る。
花と呼ばれた人と、天童さんは大丈夫だろうか。
そんな不安な様子を察したのか、大丈夫だと言わんばかりに男は笑った。
「さーて!やっちゃうヨ!」
「だるいけど、一応うちのボス命令だしなあ...。」
二人の逞しい後ろ姿を、倒れた二人の姿を、ずっとずっと見守った。