第17章 >>15 社畜は家畜な件
部屋の空間が歪んでいく、今僕が居るのは。
小さい六畳間...隣町のボロいアパートの1室、目の前には髭面の髪の長い男。
歳は27歳、高校を卒業したも想っていた職場に恵まれず今は...。
『ニートかよ、おっさん。』
母親の仕送りで生きてる感じ、そんな母親もパートで精一杯。
父親は居ない、部屋の隅に折れたギターが見える。
音楽の道に行きたかったが挫折を味わった。
大体わかってきた、でもこいつ1人じゃ...。
グチャッ...ビシャッ...────
鮮明に特定していったデータに、惑わす様に色が変わる。
途端にその色が混じり、脳内の空間が消されていく。
この感覚は。
『若利さんの時と同じ...ッ!』
「......ぇ...ねぇ!君大丈夫なの?」
ハッと我に返り、二人が居たことに気付く。
自分の顔は汗だらけで、息も上がっていた。
パソコンの横に置いてある灰皿は、ハリネズミの様に膨れ上がり、無意識に噛み締めた唇からは血が滲んでいた。
「ちょっと怖いくらいの集中だったんだけど。」
「汗、凄いですよ...。」
『そんな事よりっ...。』
二人が駆け寄って心配してくれている。
ちょっと嬉しい。
そんな事より、若利さんの件もこの二人の件も多分同一犯だ。
いや、一人ならいい。
『あんたらさ、どんだけ嫌われてんだよ...ッ!』
パソコンのエンターキーを強く押して二人に叫ぶ。
二人はその叫び声に一瞬怯み、次の瞬間恐怖に顔を歪めた。
エンターキーを押した途端に、パソコンの画面に目まぐるしく開くウィンドウ。
そこには個人情報とその人物がネット上で名乗ったであろう名前。
その名前は不気味な程に統一されて、《絵筆》と表示されていた。