第3章 >>2 会議は迅速な件
「こっちはガサ入ったよ。」
むすっとした様に端っこに座る研磨が呟くと、隣の黒尾はうんうんと頷いた。
「俺らの所はメンバーの住所だ。何らかの私怨だけで動いてる様な事態じゃ無いと思うのね。」
これは何か大きな力が加わった事件だと言う澤村はまっすぐ他のメンバーを見た。
「一回のイベで500万位動いちまう業界だからさ、一回イベが潰れただけで被害は相当でかいのよ。」
女とみだらな行為をしていた木兎が手を止めて、そう呟く。
それを見た赤葦が女に出ていくように勧める。
「木兎さん。悪い癖ですよ、今凄く怖い顔してましたし、今にも女性に殴りかかろうとしてましたよ。」
「うっそ?!完璧無意識だったわ…。」
恥ずかしそうに木兎が笑うが、その目は笑っていない。
ここにいる者は、見えない敵を探る。
「とりあえず、俺が集めてみたんだけど…。」
重苦しい空気の中、口を開いたのは研磨だった。
彼は情報を集めるのが上手く、メカに滅法強い。
それは皆が知っている事だった。
研磨のとり出したタブレット端末にうつる文字を、興味深そうに皆が見つめる。
「んんんん?キチィ??若利君、若利君、知ってる??」
天童が頭を何度も傾げながら隣の牛島を揺する。
それに対して、知らない鬱陶しいと言いたげな目線を送る牛島。
「…キチィちゃんって呼ばれてる、変わった奴。ネット界隈ではちょっとした有名人だよ。」
「で?そのネット界隈の有名人がどうかしたの?」
研磨の説明に、食い気味に及川が聞く。
「キチィが有名な理由は…ハッキングのプロだからだよ。」
スッと皆の空気が変わる。
「キチィは、金次第でどんな依頼も受けてるから…メアドもあるけど、捨てメアドだ…逆探知したけど、住所がインド洋だった。」
「インド洋って、笑いどころ?」
目を点にした木兎が口元をにやにやさせる。