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【HQ】ANARCHY【R18】

第12章 >>10 我慢の限界な件



「それが本当のお前《》だな。」

ジャージを顔面に投げ付けられてそう言われる。
重力に沿って落ちるジャージの隙間から、口角がほんの少しだけ上に緩んだ彼の顔が見えた。

「さっさと着て、早くそこから出ろ。」

慌てて渡されたジャージを布団の中でもぞもぞと着る。
暖房の暖かい風が、無表情な彼なりの優しさなのだろうか。

「金はそこに置いておく。出来るだけ早めに探し出してくれ。」

「あ。それの記入も早めに頼む。」

机に置かれたピンクの婚姻届を指さしながら、彼は寒い冬空に出て行ってしまった。
なんとも図々しい自分勝手な奴だなと思いながら時計を見る。
時刻は12時を過ぎていて、俗に言うランチタイム時。
そう言えば昨日は飲みっぱなしで何も食べて居なかったなあとお腹を撫でて呟いた。
何か無いかと冷蔵庫を開けても、大量の発泡酒と缶コーヒーしか無かった。

『どっか食べに行こ…。』

カーテンを少し開け、ベランダに出て行き交う人を見つめる。
ほんの数十時間で、1日にも満たない僅かな時間で、色んな人に会ったな。
行き交う人々は寒さ対策をきちんとして、皆いそいそと歩いていた。
猿。
あの人々は猿だ。
媚びへつらう人間関係に、反吐が出る。

『やっぱり寒いから、厚着して行こう。』

そう決意を固め、身支度を始めた。
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