第11章 >>9 ただただ痛い件
ガチャッ────
やっと家に帰れた。
慣れた部屋の香りに心がほっとするのも束の間。
「部屋シンプルすぎ!服も黒ばっかだしスカートが無いし、この下着とか何?!子供じゃ無いんだからさ!もっとセクシーなやつ今度買ってあげるから!」
喧しい、煩わしい、早口の言葉が胸にズキズキと突き刺さる。
『結構です。では覚さん、帰ってください。』
やはり彼には敬語になってしまう。
玄関を開けて、彼を帰すように言い放つ。
「えー…やだ。若利君にお泊まりしてくるーって言ってきたし。」
もじもじと手を合わせながら唇を尖らせて言う彼は、正しく子供。
というか若利君とは誰なのだ。
お泊まりって、僕の家にか?
突っ込む箇所が多過ぎてついていけない。
『とりあえず若利君って人にやっぱり帰る的な事言って下さい。』
「……髪の毛抜けちゃったの根に持ってる?」
じゃあ、ごめんね。と続く。
冷たい手が頭を撫でて、そのまま滑る様に唇を優しく撫でる。
「口の中も切れちゃって…かわいそーだネ…。」